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技術資料

モーター焼損保護方式について

ファンが何らかの原因で通電されたまま拘束された場合、巻線コイル自体の電流密度が上がり、それと共に巻線温度も上昇するので、何らかの巻線焼損防止保護をした方が安全です。
保護方式には2種類あり以下に説明します。

1.インピーダンスプロテクト方式

モーター巻線のインピーダンス(交流抵抗)を利用して、設計上巻線コイルの拘束時飽和温度を焼損温度以下に押さえる方式です。
特別な保護回路が入っている訳ではなく、常温(25℃)拘束時、巻線飽和時の温度上昇値が125℃以下になるよう設計されたものです。
安全規格上、UL規格が基準となっており、一般的には、ファンサイズ120角以下のものに採用されています。

2.サーマルプロテクタ方式

モーター拘束時、巻線コイル温度が焼損温度以下で遮断するサーマルリレーをモーター内部に配置した方式です。
サーマルリレーはコイルに直列に接続され巻線コイルの温度を感知することによって動作します。サーマルリレー内部はバイメタル方式です。
一般的には、設計上インピーダンスプロテクト方式に収めることのできない大型のファンに採用されており、主にファンサイズ127角、150φ以上のものに用いられます。

サーマル動作温度
表記温度[°C]遮断温度[°C]復帰温度[°C]
120 120±5 85±15
135 135±5 95±15
140 140±5 100±15
145 145±5 105±15
尚、動作温度はサーマルリレーの温度検知誤差及びコイルとの接触具合等による温度伝達までのタイムラグがありますので、上記に示した温度近辺での動作となります。

拘束温度上昇試験(25°C)

拘束温度上昇試験

安全規格と絶縁階級、最大許容温

安全規格絶縁階級最大許容温度
UL/CUL A種 105°C
TÜV E種 120°C
VDE E種 120°C
CQC E種 120°C
S-JET E種 120°C
一般 E種 120°C
CSA B種 130°C

ファン設置方法について

装置への取付け加工
装置への取付けは各製品記載ページの取付け穴寸法図をもとに、抜き穴加工をして取付けて下さい。
※吸込側と吐出側で取付穴形状が異なるものがありますのでご注意下さい。
ファン取付け方向
ファン取付け方向
ファンの取付け姿勢は、軸水平、軸垂直、斜め、いずれの方向でも使用可能です。
また、吐出側、吸込側のどちらでも取付けることができます。
ファン設置方法
ファン設置について
ファン設置方法は次の2種類になります。
1.片側のフランジ取付け
2.通しボルトを使った両側フランジ取付け
の2種類です。
ネジ止め方法
取付けに当っては、振動・衝撃等を受けない強固な鋼板へ取付けるようにして下さい。
又、薄い鋼板(1mm未満)に取付けた場合、ファン自身の振動は極小設計されていまますが、それでも若干の振動を持っていますので、場合によっては共振し寿命に影響を与えたり、共鳴音を発生させたりすることがありますので極力しっかりした場所へ取付けることをお勧めします。
又、取付け用ネジは付属しておりませんので、各製品に見合ったネジをご用意下さい。
締付けトルク
片側フランジ取付けを推奨します。
両側フランジ取付けの場合は、ネジの締付けトルクを注意して下さい。
適正締付けトルクは0.44N・m(M4)です。
必要以上のトルクで締付けるとフレームを変形させ、内部接触等の不具合を発生することがありますので注意して下さい。
取付け位置について
ファン開口部の正面はできるだけ広く空け、空気流の方向を急変させないようにして下さい。
ファン開口部面と被冷却体との距離は目安として、羽根径の1/2以上の間隔を保ち配置して下さい。
それ以下の間隔にすると冷却効果を損ねる場合がありますので注意して下さい。
センサー付ファンを取付ける場合、近くに大きな電磁誘導を起こすものなどがあると、誤動作する恐れがありますので取付位置にはご注意下さい。
電源供給方式
電源供給方式には2種類あります。
1.端子接続
2.リード線接続
機種によって接続方式が異なるのでカタログをご確認の上ご指定下さい。
なお、端子接続型の場合、プラグコードは付属しておりません。
オプションの取付け
ファンを装置に組込む際、人手が触れる恐れのある場所には安全性を考慮し、フィンガーガードを取付けるようにして下さい。
又、粉塵などの舞う環境下においては、ファンの開口部から装置内部、もしくはファン内部に粉塵が入り装置の故障あるいは寿命に影響する恐れがありますので、フィルターキットを取付けることをお勧め致します。
内部への粉塵流入を防止し信頼性を向上させることができます。

防水能力を表す保護等級の分類について

IPコードの読み方

1.防湿仕様

防湿仕様の用途としましては、日本国内で使用されるショーケース及び冷凍庫向けとして開発したものです。
防湿レベルは、開放形モーターのためIPX1~X2相当です。

2.防水能力

防水能力を表現するのに「IPコード」が使用されますが、元々はエンクロージャーボックスの防水能力を試験するための規格で、回転機器には適用されませんでした。
IPコードがEN/IEC規格で定義されている関係上、産業機器メーカーが欧州をマーケティングする上でCEマーキングを義務付けられたことにより、装置内部の各部品レベルにもEN/IEC規格が要求され、その規格内にIPレベルで表現されている関係上ファンにも要求されるようになった起源があります。
右記にIPコードの読み方を示します。
又、次表にIPコード定義内容を示します。

第1 特性:固形異物の侵入に対する保護の度合い
IP コード機器保護の定義人体保護の定義
保護なし 保護なし
1X 50mm より大きい固形物に対して保護しているもの 手の甲
2X 12mm より大きい固形物に対して保護しているもの
3X 2.5mm より大きい固形物に対して保護しているもの 工具
4X 1.0mm より大きい固形物に対して保護しているもの ワイヤ
5X 粉塵保護 ワイヤ
6X 防塵 ワイヤ

第 2 特性:水の浸入に対する保護の度合い
IP コード保護等級種類定義
保護なし 無保護のもの
X1 防滴Ⅰ形 鉛直から落ちてくる水滴によって有害な影響のないもの
X2 防滴Ⅱ形 鉛直から15 度の範囲で落ちてくる水滴によって有害な影響のないもの
X3 防雨形 鉛直から60 度の範囲の降雨によって有害な影響のないもの
X4 防まつ形 いかなる方向からの水の飛まつを受けても有害な影響のないもの
X5 防噴流形 いかなる方向からの水の直接噴流を受けても有害な影響のないもの
X6 耐水形 いかなる方向からの水の直接噴流を受けても内部に水が入らないもの
X7 防浸形 定められた条件で水中に没しても内部に水が入らないもの
X8 水中形 指定圧力の水中に常時没して使用できるもの
X- 防湿形 防湿形相対湿度 90% 以上の湿気の中で使用できるもの

ファンの選定

ファンの選定例
一般的な装置を対象に「必要とされる風量特性」の求め方を説明します。
  1. 装置内部許容温度、設計値明確化、装置内部温度の設計値を何℃以下にするか明確にします。
  2. 装置内部の発熱量計算
    装置内部発熱について
    装置内各部品の入力電圧及び消費電流などにより、発生する熱量を求めます。
  3. 必要風量の計算
    計算式で必要とされる風量を計算します。
  4. システムインピーダンス(管路抵抗)の考慮
    システムインピーダンス(管路抵抗)と風量特性の関係
    装置内のシステムインピーダンスは、その装置が構成されている各部品による密集率、管路形状から決定される装置固有のものですが、空気の流れが妨げられると損失となり、この圧力損失のことをシステムインピーダンスと呼びます。
    システムインピーダンスは計算式で求めることができますが、その装置固有の定数を知る必要があり内部の管路容積を寸法から追って計算しても求めることは難しいため、一般的には最大風量が必要風量の1.3倍~2倍のファンを選択します。
    装置内部の密集率で圧力損失が変わってきますので、目安として必要風量は管路抵抗が小の場合:1.3倍、中の場合:1.5倍、大の場合:2倍するとほぼ要求する風量となります。
  5. システムインピーダンス計算式
    P=KQn
    P:低下圧力(Pa)
    K:装置固有の定数
    n:空気の流れにより定まる定数
    n=1層流時
    n=2乱流時*通常n=2
  6. ファンの選択
    計算した必要風量Qと取り付けようとする
    ファンサイズからファンを選定する。
軸流ファンとブロワーファンとの相違点
軸流ファンとブロワーファンとでは、性質上、静圧一風量特性曲線に大きな違いがあります。
軸流ファンは管路抵抗小(図2参照)のとき高い風量が得られ、管路抵抗が増加すると共に得られる風量が大きく減少する性質があります。
これに対しブロワーファンは、軸流ファン同等のモーターを使用しても、高風量を得ることができず得られる風量は小ですが、管路抵抗大の場合でも得られる風量に極端な落込みがなく風量を維持する性質があります。

静圧-風量特性について

各仕様に掲載しましたPs-Q特性曲線は、実測したデータの平均値で保証値ではありませんので装置設計検討時のファン選定の目安として下さい。
静圧-風量特性の測定方法
風量測定方法は現在、ファンモーター業界で大半のメーカーが、米国の「AMCA STANDARD 210-85」に基づいたマルチノズルダブルチャンバー方式を採用し測定しています。本測定方法の起源は、「JIS-B-8330」に規定する風管方で、ピトー管又はオリフィスを使用した場合、少風量、微風量域での正確な値が得られない為、JISの中で付属解説している微風量域を正確に測定できる「AMCA STANDARD 210-85」規格によるマルチノズルダブルチャンバー方式を採用する経緯となっています。一部製品に風洞測定値を使用している製品もあります。測定方法を下記に示します。

1.風洞測定

風洞測定は、円筒型の風洞中央にピトー管を設置し、風洞端にファンを取り付けダンパ側より吸込み、ピトー管部を通り吐出されます。ピトー管は、風洞中央部の管路抵抗の少ない所で測定するのが一般的で、最も管路抵抗の少ない風速の一番速い所で測定していますので、風量が高めに出ます。ダブルチャンバー測定と比較しますと、約2~3割高くなります。

2.マルチノズルダブルチャンバー測定

マルチノズルダブルチャンバー測定は、初めにマルチノズルを全閉状態にてチャンバーA内に密閉環境を作り最大静圧を測定し、次に補助ブロワー及びダンパー開閉にてチャンバー内の圧力を自動制御することで、送風抵抗0の状態を作り出し空気流を平均化して最大風量を測定します。計測された最大風量より指定の測定ポイント数(弊社においては10ポイント測定)で最大風量を除算分割することで、10ポイント測定なら10箇所に除算分割したその各風量ポイント時における送風抵抗0の状態を、最大風量測定時と同様に補助ブロワー及びダンパー開閉、又その風量時における適正なマルチノズルサイズに変更することで作り出し、マルチノズル前後に配置している圧力計の圧力差を測定し演算することにより、パソコンとの連動で計測します。
風量測定装置
ファン動作ポイント
ファンの選定でも触れていますが、管路中の空気をある一定方向に流そうとした場合、その流れとは逆に送風抵抗が発生します。この送風抵抗は、風量の2乗で増加していく関係があり、これが「システムインピーダンス」と呼ばれるもので、静圧がかかった状態のファン特性とシステムインピーダンスとの交点が「動作ポイント」となります。又、ファンを運転する上で、できれば動作させない方がよい領域がありますが、この領域を「サージング域」と呼び、サージング域に入る直前のポイントの事を「サージングポイント」と呼びます。このポイントより静圧特性がドロップダウンし終わるまでの領域がサージング域となります。これら一連の現象を「サージング現象」と呼びます。この現象はシステムインピーダンスを掛けた時、ある特定の領域で圧力が脈動し必要な空気量が得られずに息付きをし発生するもので、弊社が扱う小型のファンでは、静圧-風量特性が不安定になり若干騒音への影響があるレベルで収まりますが、数10m3/min.を発生するような送風機では、サージング現象を起こすと振動及び騒音を発し運転を継続することができなくなり、ファン等を損壊することもあります。
ファン動作ポイント
次に風量は下記計算式で求められます。
Q=60AV
Q:風量(m3/min)
A:ノズルの断面積πD2/4(m)
V:ノズル出口の平均風速
 V=2・△Pn/γ(m/sec)
γ:空気の比重(kg/m3)
 [20℃1気圧の時γ=1.2]
△Pn:動圧(Pa)

ファン風速分布特性

風速分布曲線
図1の曲線は、軸流ファンの風速分布を表したものです。
図1からもわかるように吸込側と吐出側の風速は相違します。
特徴としては下記の通りです。
  • 吸込口側の風速分布域は、微弱で短距離地点から広角上に吸込もうとします。
  • 吐出口側の風速分布域は、到達距離が長く、ほぼ直線上に強い風速を発生します。
  • 風速は羽根外周部が最も高く、その直線上に高風速域帯が発生し、羽根面全体で送り出すことにより周囲に拡散していきます。

漏洩磁束の問題と対策方法

漏洩磁束による問題は、まず大抵の場合ディスプレー画像の揺れなどの影響だと思いますが、ファンは単相2極くまとりコイル誘導電動機のため、モーターコイルが巻かれている部分に最も強い磁束を発生しますが、磁束は必ずN極からS極へ流れる性質があるため、最も強く磁束を発生している巻線コイル部から異極の巻線コイル部へと楕円を描くように磁束を発生させます。下敷き上の砂鉄に棒磁石をあてた時のことを思い出して下さい。対策としましては下記の通りです。
  • 距離を確保する
  • ファン外周を鋼板で覆いシールドする
  • 取付け位置、又は方向(角度)を変える
  • 入力端子の極性を入れ替えることによって、偏光コイルとの磁気極性方向を変える
  • 偏光コイルとファン間をシールドする
上記のような対策で効果を得られることもありますが、使用状況によっては効果がないこともあります。

羽根枚数、フレーム形状及びファン取付け部 形状による騒音発生原因について

騒音の項で少し触れますが、軸流ファンの場合、騒音として最も影響を与えるのは、吸排気音です。特に吸込み側の外周部で発生しますが、吸込み側の外周部は周速が早く面積的に広く、又流量も多いため風の流れがランダムとなり干渉現象が起き高い音となります。吐出側の方がその影響は少なくなります。更に要因を細分化しますと下記の通りです。

1.ファン設計上の問題

  1. 羽根形状
  2. フレームリブ本数と羽根枚数との関係
  3. フレームリブと羽根(吸込み口)交差角度
  4. フレーム内径(ベンチュリー)形状
  5. 羽根材質

2.ユーザー側の問題

  1. ファン取付け部正面の設計形状
    ファン吸気口に網目状のガードを使用してファンの羽根との交差角に問題がないか、極力面状ではなく点状で風を切れる形状をとるようにして下さい。
  2. システムインピーダンス動作位置
    サージング域に動作ポイントがある場合、吸気音が高くなることがありますので、サージング域を避けて使用して下さい。

3.ファン並列使用時の騒音

並列運転した場合に相互干渉にて騒音が高くなることがあります。
干渉音を押える方法については、「並列運転、直列運転について」をご参照下さい。

衝撃強度

ファンモーターには精密級のボールベアリングを使用してますので、衝撃を与えないようにしなければなりません。落下衝撃に関しては耐えられる大きさを数値で表すのは難しく、同じ距離における落下衝撃でも落下方向及び落下角度によっては与える衝撃が全く異なります。弊社としては下記内容にて確認しています。

1.単品落下、衝撃試験(ベアリング耐衝撃)

  1. 試験条件コンクリート床の上に厚さ10mmの木板を置き、ファンを自然落下させる。
  2. 落下高さ及び規格
  3. 落下高さ40mm:軸受音を除く軸受部に異常なきこと
  4. 落下高さ500mm:外観構造上異常なきこと

2.フレームリブ強度(フレーム外角とモーター間)

代表機種S4506シリーズ(120×38mm)を下記に示します。
  1. リブ3本の破断荷重:1373N(リブ1本の破断荷重:461N)
  2. 衝撃力に換算した値:3432m/s2(リブ1本当り:1152m/s2)
    ※ローターとステータの合計荷重=400g

騒音

ファンの騒音は、聴覚に近いとされる聴感補正回路のA特性[dB(A)]で表されます。騒音の原因は、ファン送風による吸排気音、機械的に発生する軸受音、電気的に発生する磁気音、筐体取付によって発生する共振音又は反響音及び、他の機器との相互間で発生する干渉音と様々です。この中の吸排気音は風量に比例関係であるため風量が増えれば吸排気音も大きくなります。又軸受音は、回転数が高くなれば高くなり、筺体への共振及び反響音等も発生しやすくなる傾向にあります。ファン自体が発する騒音として、最も影響を与えるのは吸排気音ですが、弊社のファンにおいては、高風量設計でありながら極力騒音を押さえた設計としています。又騒音は装置設計に依存する場合が多く、装置の初期設計が重要となり、騒音レベルを大きく左右する場合があります。装置設計をする際には、次のようなことに注意して下さい。

1.ファン吸排気口と被冷却体との距離は、設計上許される範囲で最大限とるようにして下さい。
 近づけ過ぎると風量が殆ど出ない状態になります。
 目安としては羽根外径の1/2以上離すようにして下さい。
2.ファンの流路が直角に折れ曲がるような設計は極力避けて下さい。圧力の損失となります。

その他、装置設計する上で以下の事に注意して下さい。

1.並列にファンを装備し複数使いされる場合、ファン相互による干渉で騒音が高くなる場合がありますが、ファンの間隔をあけるようにするか、又ファンの間に仕切り板を入れるようにして下さい。
2.フィンガーガード及びフィルターキットをご使用される場合、スポーク又はフィンとの干渉で風切り音が発生することがありますが、スペーサー等を利用しファンとの間隔をあけることにより改善することができます。
騒音の測定
騒音測定方法
弊社の騒音値(A特性)はファンの吸込口中心線上より1.5mの位置(DCブラシレスファンを除く)で測定した値です。(図1による)又カタログ掲載の騒音値は、無響室の中で測定してます。この測定方法は、旧JISB8330の「送風機の試験及び検査方法」に準拠していましたが、現在、騒音に関してはJISB8346の「送風機・圧縮機の騒音レベル測定方法」に移行され、ファン吸込口中心線上1.5mから1.0mの位置での測定に変更されています。弊社が1.5mでの測定を採用しているのは従来発行してきました仕様書との互換の問題で変更していませんが、いずれは変更する予定です。又、ファンメーカー間における騒音測定方法は、統一されていないのが現状で、カタログ上での単純比較はできませんので、測定方法をご確認の上比較されるようお願い致します。
距離と騒音値の関係
騒音は音源中心から球面状に伝播し、その距離のほぼ2乗に反比例して減衰していく性質をもっていることより次式の換算式が成り立ち、基準となる騒音値が明確であれば相違する距離での騒音値を計算で求めることができます。
dB=dB0+10・log10(10/1)2
dB:距離1時の騒音換算値(dB)
dB0:距離10時の基準騒音値(dB)
10:基準距離
1:換算したい距離

上記換算式における10と1との関係上、換算する距離が一定なら騒音増加率も一定となることがわかります。例えば1.5m時の騒音値を1.0m時の騒音値に換算するには、3.5(dB)の増加となります。上記式で求めた値は、目安レベルのものなので正確に測定した値とは異なる場合があります。
合成騒音
ファンを2台以上運転する場合の騒音値は、次式で求めることができます。
dB=10・log10(10dB1/10+10dB2/10+10dB3/10...)
dB:求める合成騒音値(dB)
dB1:ファン1の騒音値(dB)
dB2:ファン2の騒音値(dB)

例えば2台の合成騒音で2台共同一の騒音43(dB)のファンとした場合
dB=10・log10(1043/10×2)=dB1+3=46(dB)
となり、ファン1台の時より3(dB)の増加となります。
又、騒音値の異なるファン同士の場合には
例えば1台目が43(dB)、2台目が56(dB)とした場合
dB=10・log10(1043/10+1056/10)=56.2(dB)
となり、同一ファンの場合とは違い0.2(dB)の増加しかありません。
この事は、騒音値の異なるファン同士の場合、騒音レベルが大きいファンの影響が殆どであることを意味します。同様に装置設計する際は、装置内で最も騒音値の大きい部品の騒音値を押さえる必要があります。

並列運転、直列運転について

並列運転時の静圧-風量特性 直列運転時の静圧-風量特性
同じ特性のファン2台を、並列運転または直列運転することにより、特性を変化させることができます。図1に示すように並列運転した場合には、最大風量が1台運転時の2倍となり、又、図2に示すように直列運転した場合、最大静圧が2倍に理論上変化します。
ここで2台並列運転で2倍の風量、3台並列運転で3倍の必要風量が得られると言う訳ではなく、システムインピーダンスの動作点が変化するので注意して下さい。
風量の増加に伴い抵抗は2乗で増加するので、システムインピーダンスの動作点も変化することになります。

相互干渉による起動・回転のトラブル防止

並列運転時、一つ注意しなければならない点はシステムインピーダンスが高い場合、又は近接した並列状態での運転では、空気流を取入れなければならない装置吸込側から吸入せずに、一方のファンから吸込み、もう一方のファンへ吐出すと言う現象が発生することがあります。
この現象は、互いの空気量の取り合いから起るもので、モーターに過負荷を与え回転にブレーキをかけるため発生します。この状態になりますとファン特性の低い方あるいは立ち上がりが遅れた方は、他方のファンに引張られ著しく回転速度が低下して最悪の場合はファンが逆回転し、長時間の使用ではモーターを焼損してしまうことがありますので注意して下さい。
直列運転時においても、互いに干渉し合いモーターに過負荷をかけるので、ファンを選定する際は十分に検討する必要があります。
並列運転時の対策については下記の通りです。
  1. ファン間隔を広げる
  2. ファン間に仕切板を入れる
  3. システムインピーダンスを下げる(装置内部密集率を改善する)などのことで効果が得られる場合もありますが、効果の無い場合もあります。
直列運転時の対策については、ファン同士を直結せず間隔をあけるなど考慮して下さい。

オプション、フィルターキット取付けによる静圧・風量特性の変化

フィルターキットをファンに取付けることにより、風量特性が2~3割減少しますのでファン選定時に考慮する必要があります。又、フィンガーガードに関してはほとんど影響がありません。
ファンを装置に組込む際、フィンガーガードやフィルターなどのオプション類を取付けることにより安全性、信頼性を向上させることは重要ですが、送風抵抗となり、静圧-風量特性、騒音に影響を及ぼしますので検討の際は考慮して下さい。


ファンセンサー

昨今はお客様装置の小型化、高速化が進むと共に強制冷却が必須な装置が増えております。
ファンモーターは部品であり、寿命がありますので装置ごとに適正な交換時期を設定いただき、早めにメンテナンスされる事で未然にトラブルを防ぐ事が肝要ですが、その交換時期を示すファンセンサーを御用意しております。

金属羽根タイプのファンセンサーはその特長を利用して、ファンモーター外郭の側面にマグネットとピックアップコイルを取り付け、金属羽根が通過する時に生じる磁界の乱れを検出して回転数に比例した交流信号を生成し規定の回転数以下に低下したときにアラームを出力するセンサーです。

DCファンモーター用のファンセンサーは内部駆動回路からの回転信号を基に同様の方法で回転数低下のアラームを出力します。またDCファンモーター内蔵型の回転停止センサーもラインナップしております。長年の生産実績をもち、シンプルな回路構成とする事で信頼性も高く、様々なお客様の設計思想に合致するよう多くのバリエーションがあります。

リレー出力タイプは信頼性を高めるために、ガラス管封止されたリードスイッチを採用しており、設置環境の影響を受けず、機械的接点寿命は1億回以上あります。
代表的なファンセンサーの選定
  1. ノーマルオープンとノーマルクローズの選定
    ファンモーターが正常回転の時に出力がオープン(N/O)になるタイプとクローズ(N/C)になるタイプを選定します。型式末尾に「-N/O」又は「-N/C」にて指定します。
  2. ファンモーター電源投入時の出力状態の選定
    ファンモーター電源投入時の回転数が低いときに正常出力が良いかアラーム出力が良いかを選定します。正常出力が良い:起動遅延時間タイマー付き
    型式:T□□□又はT□□□B
    アラーム出力が良い:起動遅延時間タイマー無し
    型式:S□□□又はS□□□D
  3. センサー電源OFF時の出力状態の選定
    正常出力が良い:T□□□又はS□□□D
    アラーム出力が良い:T□□□B又はS□□□
  4. その他の選定項目
    • センサー電源電圧の選定
    • 出力デバイス(リレー、オープンコレクタ式)の選定
    • 入出力線形式(リード線かリード線の端末にコネクタ付き)の選定
リレー出力型センサーの標準の定義
リレー出力型センサーは1a(1メイク)のリレーが付いたものが標準になります。

タイマー付きのT型センサーで「T□□□B」と末尾に「B」がつくタイプは内部のリレー駆動回路前までの動作がノーマルクローズになっています。よって1a(1メイク)のリレーが付いた場合は、センサー全体が、ノーマルクローズとして動作します。またこの回路のタイマー機能を除いたタイプがS型センサー「型式:S□□□」になります。
また、タイマー付きのT型センサーで「型式:T□□□」のタイプはリレー駆動前までの動作がノーマルオープンになっており1a(1メイク)のリレーが付いた場合は、センサー全体がノーマルオープンとして動作します。またこの回路のタイマー機能を除いたタイプがS型センサー「型式:S□□□D」になります。
起動遅延時間タイマー付きセンサーの注意点
どのセンサーでもノイズマージンと電源電圧の瞬間的な低下に対応するため、コンデンサーで積分しています。
そのためセンサー出力が変化する時は、動作遅延時間として3秒以内のタイムラグがあります。よって起動遅延時間タイマー付きセンサー「型式:T□□□B」でも動作遅延時間があり、センサー電源投入前はアラーム出力、電源投入後は3秒以内の動作遅延時間を経て正常信号になりますのでご注意下さい。
センサー出力形式の確認方法
弊社のセンサー付き製品で1994年以前の製品は、センサーラベルにノーマルオープン、ノーマルクローズの表示がされておりません。リレー出力タイプでセンサー型式が判明している場合は、上記説明からわかるように電源OFF時の接点の導通の有無を調べる事で判断が行えます。

接点間の導通がない
T□□□→ノーマルオープン
T□□□B→ノーマルクローズ
S□□□→ノーマルクローズ

接点間の導通がある
T□□□→ノーマルクローズ
T□□□B→ノーマルオープン
S□□□→ノーマルオープン

ファンモーターの寿命

寿命時間-周囲温度曲線
ファンの寿命を大別すると、電気的な部分の寿命と機械的部分の寿命があります。
ファンモーター構造は、巻線部、回転部及び軸受部フレームから構成され、設計不良の発生しにくいシンプルな構造です。
電気的な部分は使用範囲内でご使用される場合、まず問題が発生する事はなく、ほとんどの場合は機械的部分の軸受寿命が起因する要素となります。
軸受寿命はファンモーターの設置・運転される環境に大きく左右され重要なファクターの一つですが、運転される前の取り扱いや保管状態も寿命を期待する上では重要なファクターになります。
  1. 軸受構造
    長年のファンモーター設計・製造・販売の経験を生かし、軸受荷重の重量配分、予圧(スラスト荷重)方法、はめあい公差、動バランスなど様々なノウハウをもとに設計しております。
    回転部分であるローターの重量から適切なシャフト径を選定し、余裕ある軸受サイズのベアリングを使用するとともに、主たる熱源である巻線部分の放熱性を考慮した設計をすることにより、長寿命化を目指しています。
    弊社の軸流ファンは全て精密ボールベアリングを2個、クロスフロータイプは羽根が長いため3個使用しています。
  2. 軸受と封入グリース
    軸受はある時間を経過すると、音響・振動の増加、内部磨耗による精度低下、封入グリースの劣化、ボール転がり面の疲労剥離などによって、使用に耐えられなくなります。
    この使用に耐えられなくなる時間が軸受寿命であり、音響寿命・磨耗寿命・グリース寿命・転がり疲れ寿命などと呼ばれています。
    ファンモーター運転までの間に取扱上の問題(落下・衝撃)があった場合は転がり面の傷・圧痕・打痕が発生し音響の増大、磨耗寿命・転がり疲れ寿命の低下を招きます。
    通常はファンモーター運転による巻線からの熱と軸受の自己発熱によりグリースが劣化していき枯渇して寿命に至ります。場合によってはグリースが枯渇しても回転する場合もありますが、過負荷による巻線の異常発熱から巻線のレアーショートを誘発して焼損に至る事もありますので、回転数の低下、又は軸受音響から、ファンモーターの設置された装置の部品として交換時期の設定を行っていただき、安全にファンモーターをご使用下さい。
  3. 使用温度と湿度
    ファンモーターの設置される環境温度・湿度が高い場合、封入グリースの劣化を促進し早期寿命に至ります。湿度に関しては封入グリースの油分離や流出を招きますので、結露する場合は注意が必要です。また保管期間が長かったり、保管する場所の湿度が高い場合も同様な影響を受け、ファンモーター運転の寿命を短くします。
    昨今はお客様装置の小型化、高速化が進み、高温環境で使用されるケースが多くなってきました。高温環境(100℃以下)で使用される場合、使用する部品も耐熱タイプを選定し、巻線自己発熱の低いコンデンサー型を採用した8507/4507シリーズをご選定下さい。
  4. 電食
    ファンモーターが設置される電源などは高効率、高性能なインバータなどの高周波装置も多く、ファンモーター電源ラインからくる直接的なものや空中を伝播される高周波ノイズにより、軸受のボール転がり面に電流が流れる事により、波状の磨耗痕が発生する場合があります。このような症状は電気車両に設置した場合も発生する事があり、早くて3ヶ月、遅くても1.5年の間に発生する事が多く、症状としては音響寿命(高音の異音)になります。そのまま気付かず運転した場合は、軸受の異常な自己発熱によりグリース寿命に至ります。
    対策としては筐体とファンモーターを電気的に絶縁(周波数が高い場合効果が低い)するか軸受内部のボール材質をセラミックにしたタイプをご推奨致します。稀なケースであるため標準品としてラインナップしておりませんので、弊社各営業所へご相談下さい。

用語解説

静圧(Ps)-風量(Q)特性曲線
圧力を受けた場合の風量が、おのおのの圧力条件における風量との関係を曲線としたもので、静圧(圧力損失)を受けた場合、どのくらいの風量が得られるかを示す曲線
静圧:Ps(Pa)
ファン運転による反力及び装置損失となる圧力でファン前後に発生する圧力差のこと
風量:Q(m3/min)
単位時間内に送出できる空気量のこと
最大静圧
そのファン自体が持つ最大圧力で密閉された空間で測定される値(風量0時の値)
最大風量
ファン運転時には必ず反力及び装置損失が発生するが、その圧力損失が無いと仮定した場合の風量
難燃グレード
グレード 難燃性
UL94V-0
UL94V-1
UL94V-2
UL94HB
UL規格で定められているもので、機器に使用されるプラスチック部品材料の燃えにくさの度合いを表したものです。消火時間、摘下物による発火などの項目で評価されます。分類を上記に示します。
騒音
人間が聴覚で聞いた時、「不快」と感じる音のことを騒音と呼びます。
dB
デシベルは音の強さを表す単位で物理的に決める値です。
dB(A)
人間の耳で聞こえるのは、20Hz~20000Hzまでの範囲、やかましく聞こえる音、すなわち、耳の感度がよい40Hz~8000Hzくらいが騒音の対象となりますが、そのレベルを測定する場合、うるささの度合いが人間の聴感に近づくように周波補正したものが聴感補正回路のA特性です。
定格
その製品に保証された使用限度で、ファンの場合は連続定格となり連続して使用ができます。定格電圧以下にて御使用下さい。
静圧-風量単位換算表
弊社においては、静圧-風量特性の単位に静圧=Pa、風量=m3/minを用い表示しています。その他の単位に換算したい場合は次の換算表をご利用下さい。

圧力の換算表
風量の換算表

安全保障輸出管理制度

輸出規制貨物について
輸出規制貨物は、輸出貿易管理令別表第1において、武器Z(第1項)、核兵器や生物・化学兵器、ミサイルといった大量破壊兵器および通常兵器の開発・製造等に用いられる蓋然性が高い貨物(第2項~第15項)と、汎用性が高くても用途が兵器の開発等に利用されるという情報が確認された場合に規制される貨物(第16項-補完的輸出規制)が定められています。
弊社製品の該非判定について
第16項補完的輸出規制については、電気部品・機械部品等すべてが対象範囲に該当となるため、弊社製品もすべて該当となります。詳細は経済産業省安全保障貿易管理課のホームページでご確認頂き、輸出許可の要否に関しては御客様にて御判断下さい。